AXISのつながり
多摩美術大学の教授である宮崎光弘先生の退職記念展示で、篠原紙工は芳名帳と展示会場で使われる紙の什器の制作を担当させていただきました。宮崎先生は篠原紙工の新島さんの多摩美時代の恩師であり、そのつながりから2018年には「AXIS THE COVER STORIES」の制作を篠原紙工に依頼して下さったという流れがあります。この仕事は私たちにとっても非常に影響力がある仕事で、6年近く経った今もAXISがきっかけで私たちの存在を知り、問い合わせしてくださる方々がいらっしゃいます。
八王子にある多摩美のキャンパスに久々足を運んだのですが、学内にある展示会場に入ったのは初めて。外から見ても美術館並みの立派な展示空間で、さすが、名門美術大学だなと改めて感じます。会場には宮崎先生がアートディレクションされている AXISのポートレートシリーズ、1997年からの本がずらりと並べられ、空間そのものが圧巻でした。2018年の篠原紙工での制作風景の動画も流されていたのですが、なんだか随分と昔に感じてしまいました。
夕方からは宮崎先生と他3名の名高い方々を交えてのトークがあり、そのトークが語り尽くせないくらい面白い内容だったのですが、そのほんの一部をここでシェアできたらと思います。トークの中で宮崎先生がお話されていた「デザインというと出来上がった物にフォーカスされるけれど、そもそもそれをつくった人って、どんな考えがあって、どんな人なんだろう?そんな考えからAXISの表紙はポートレートにしました。」という理由を聞いて、私個人的にはその意見がとてもストレートで素直に感じられ、安直な反応ですが、「いいね」と心からうなづいてしまいました。AXISのインタビュー記事は20年近く前のものでも古く感じることは全くなく、今見ても読み入ってしまうのは、所々にデザインという域を超えて、その人の哲学、根本的な物事の捉え方を書いているからなのだと思います。
後半は糸井重里さんを迎えてのトーク。ここでも興味深い話は盛りだくさんでしたが、学生さんからの質問がきっかけで、「言葉は伝える手段のものだけど、言葉では全ては伝わらない、」というような内容をお話されていたのが私の中で印象的に残っています。このことは、私も考え続けていることの一つです。言葉にする、言葉で伝えることは大事という考えはベースにはあります。でも、言葉にならない、伝えられない、ということもあります。話せば話すほど伝わらないこともある、そういう時は言葉ではなく、行動なのか、態度なのか、タイミングや時間が必要なのか、とにかく言葉にすればいいというものでもない。そして、自分の考えや感じたことが言葉にならないことも多々あります。でも、時々、友人や過去の偉人、本、SNSやメディアなどでまるで自分の言いたいことを代弁してくれているかのような言葉を発してくれていることがあります。そんな時、「それ、それだ」と思うと同時に、誰かができたのであれば、やっぱり言葉にはできるんだ。あぁ、やっぱり、あきらめてはいけない。と思うのです。(私の記憶では)糸井さんはそんなことをお話しされていたと思うのですが、私も同じことを考えます。「言葉にすることをあきらめちゃだめ。」糸井さんがおっしゃられていました。この一言はしっかりと記憶に残っています。