法术

植物たちについて

先日、篠原紙工に以前から存在していた植物について綴りましたが、今回は新たに加わった植物についてお話ししたいと思います。

篠原紙工のオフィスにグリーンを増やすことは兼ねてからの私の小さな願いでした。ここ数年で会社の価値観に共感してくれるメンバーも増え、社内の雰囲気もより穏やかになり、目に見えない小さな変化の積み重ねと共に、目に見える形ではオフィス環境を整えたいと思っていたところでした。

街で観葉植物を販売しているところはたくさんありますが、私が欲しかったのは天井に届くくらいの大きな木々。どうやって手に入れるものなのか…と悩んでいたところ、社内のメンバーの知り合いで、環境に適した植物を選別し、植物で空間をデザインする仕事をしている方がいるとのこと。まさにそんな方を探していました。 その方のお名前は長田さん。まずは篠原紙工に来ていただき、ご挨拶。その際に頂いた名刺を見ると、肩書きが「花屋」とありました。とてもシンプルで、なんかいい感じです。4階のオフィス空間を見てもらったのですが、やはり、植物たちには適した良い空間だと ! 私たちの希望を伝えると、いくつか植物を置いた際のシュミレーション画像を作成してくださいました。緑化計画の妄想は膨らみます。

しかし、画像上で想像するのと、実際に植物を見て、触れるのとでは大違い。私たちは長田さんに頼み込み、業者しか入れない世田谷区の植物市場に連れて行ってもらうことにしました。市場といえども普通の道路沿いにあり、普通に歩いていたら気づかないような所、でも一歩入るとそこはもはや植物園。緑が生い茂っています。
その中から、選ぶ…。たくさんの中から選びぬくって大変です。大きな植物たちが佇むグリーンハウスに「どうしようか〜?」と30~40分近くずーっといるとふっと、あっこれ!という感覚がまるで降ってくるかのように、これが直感なのでしょうか。アイデアがやってきました。五感で取り入れた情報がまとまった感じです。それ以降は、「でもこの大きさだと…この色だと…」などと、頭で考え始めると、決断が鈍ると思い、長田さんに購入を決めた大きな植物たちをカートで運でもらい、車で江東区まで帰りました。車の中はまるで森状態、緑がわんさか。

篠原紙工に到着、エレベーターに入らないくらいの大きな木もあります!
さて、この木々をどこに置くか。これも感覚でしかないのですが、長田さんを含め3人であれこれ植物たちが映える場所を探します。物を置く場所って、もちろん、利便性もあると思いますが、まるで磁石か何かに引き寄せられるかのように、ピタリとハマることがあります。よく考えれば、背景が壁で視線的に邪魔がないからとか、理由付けはいくらでもできるのですが・・・。ひとまず、各植物たちの生息場所が決まり、長田さんから共存するためのレクチャーを受け、その日は終了しました。長田さんは植物だけでなく、お花のアレンジメントや個人宅の庭の植物選びもやるとのこと、このコロナ/covid-19を背景にお家での時間が多い中、こういうサービスを欲している方々は多いのではないでしょうか。

以前にも書きましたが、私は植物に詳しいわけでも、育てるのが得意なわけでもありません。でも、植物はとても好きです。彼らは喋らないし、動物と違って意思疎通もありません、が、何かを発している気がします。葉の色や形を見たり、風で葉っぱが揺れる姿はぼーっとする時などは飽きずに眺めてられます。こちらがどんな精神状態であろうと、植物や木々をみていると、彼らはいつも動じないというか、そこに安心感を感じるのかもしれません。動物は彼らのペースもありますし、人にも同調して、アップダウンがありますよね、それがたまらなく愛おしいところでもあるのですが。植物はもっと大きなエネルギーで生き物を包み込んでくれるような気がします。私たち人間が森林浴はいい、とか、森はいい、とかいう言葉が出てくるのはそういうことなのでしょうか。

篠原紙工は工業系の機械が主役でもありますが機械だけだとどうしても人工的で無機質な感じになってしまいます。しかし、その機械を操るのは人間という有機的な生き物。機械と人間、ある意味セットで当たり前の風景なのですが、その調和をしてくれるのが植物の役割だと私は思っています。そのため、工場だからこそ、どこか一部は有機的な空間を作りたいとも思っていました。制作現場の中に緑があるのもいいなと思うのですが、現実は紙粉などがたまれば植物にとってはあまりよくないはず、(人間にも)きっとそのメンテナンスも大変。
有機的・無機的なバランスを考慮し、そして幸いにも4階のオフィスは植物にとっても居心地の良い条件が既に揃っている環境があるため、彼らを迎え入れることができました。私たちだけでなく、この空間に入った方どなたも「なんか、いいな。この空間」と無意識なくらいで感じてもらえたら嬉しいです。

最後に、ただ植物を購入して、届いたものを置くだけ、というより植物のプロに環境を考慮したデザインしてもらう。鉢なども好みを伝え、適したサイズ、デザインを選んで用意してもらう、というやり方がとても有意義な時間でした。植物レクチャーも含め、彼らのメンテナンスも時々行っていただけるとのこと。植物と共存するオフィス、住空間を作り上げたい方には長田さんのようなプロ、自分たちの好みに近い方と相談しながらつくりあげることを本当にお勧めしたいです。共存することは大変なことでもあるけど、その中で小さな物語が生まれることが楽しみです。



法术04