綴る

篠原紙工 in China

上海にある本屋 BANANA FISHさんからご招待をいただき、7月3日から7日まで、中国の深圳で開かれていたアートブックフェアに行っていました。
外国人の入国が厳しいとは聞いていましたが、私たちも例外ではなく、特にたくさんの書籍を荷物の中に入れていたのが原因で税関のところで、なんと要注意人物として扱われてしまいました。ごたごたあったものの、一緒に行った中国国籍のスタッフのおかげでなんとか中国の土地に足を踏み入れることができましたが、なかなか心が萎えるスタート。「郷に入れば郷に従え」この考えは私の中ではとても大事なのですが、この出来事を冷静に捉えてこれからの滞在の心の準備体操が必要だな、そんなことをぼんやりと感じながら心身共に疲れた体に鞭を打って深夜の空港を後にしタクシーに乗り込みました。

初日。主催者が整えてくれていたブースに行って日本から持ってきた本を並べ、展示スタート。これだけでフェアに参加できるとはありがたい限りです。初日の4日はメディアやVIPの方々がこられるということでした。国営の印刷会社の方、深圳自治区の役所の方々などお国関係の方々が来るところも興味深いところでしたが、もちろんグラフィック、プロダクトなどデザイン関係、アートディレクションの方々も会場に来ていました。自分の(かなりの)独断で篠原紙工に合いそうな人に声をかけ、会話を繋げてみました。

篠原紙工のブースにいる人の滞在時間はそこそこ長く、モーションシルエットはやはり反応がよくて「個人的に欲しい、どこで買えるの?」とおっしゃってくれる人がたくさんいました。Amazonでは買えるのだが….。と言いたいところですが、ネット環境が独特な中国。日本で買えるものも自由には買えないという現実があります。ある人はそのことを話すと「そうよね、それが中国だから。」と笑いながら話していました。その方は50代くらいのフレンドリーで素敵な感じの女性だったので、つい私もストレートに「不便さを感じますか?」と聞いてしまいました。すると彼女はたっぷりの笑みを浮かべながら「不便はあるけど自分の考え方は自由だからね。」と。その一言が私にとってはとても考えさせられる言葉でした。

さて、会場の様子はというと展示されているものは本だけでなく、イラストやポストカードなどの紙雑貨、オブジェなどもあり。東京アートブックフェアもここ最近は特に本だけの展示ではないので似た感じもありますね。そして、よくよく周りを見渡して気づいたのは出展者がみんな若い。(来る人は10代もいたと思う)出展は20代が中心なのでは? 展示販売物もアートブックで本自体の造本にこだわったり、考えられたデザインで引き込まれるようなもの、というよりは個人的な表現活動で絵画やイラストを出しているというように私には見受けられました。自分で何かをやりたいという欲求は人間の自然な性質でもありますよね。

あと、出展者も見に来ている人もみんな物に対する興味や好奇心が非常に旺盛なのは肌で感じられました。正直、篠原紙工のテイストや展示にはあまり興味ないかもな…という感じのとても若い人でも全てをとりあえず手に取って触って全部見てみる!という態度は一貫して全体にあったと感じます。どんなことでも吸収してみよう、というエネルギッシュさはいい意味での貪欲さといえるかな、そこら辺は日本ではあまり感じられないかもしれない。

篠原紙工の展示物の中でも川島小鳥さんの「明星」は入り込みやすいのか、手に取ってじっくり眺めていく人が多かったです。この本は台湾が舞台なのでもしかしたら展示できないかも、と実は少し心配していたのですが、「内容が平和だからこれは大丈夫。」とokのハンコもらえたので堂々と展示できて、ふぅ、よかった〜!(ほんとこの一言に尽きる)また、日本語の小説集もじっくり眺めている人も結構いて、「日本語が読めますか?」と聞くと、「全く」との返答。それでもじっくり見てもらえるのは製本の力があると思う(信じたい!)

会場でのコミュニケーションでも発見がありました。英語が通じるかなと思って話しかけてもなーーんの反応もなく目も合わせない人も結構いて。英語がわからないんだなと判断し、私から「你好(ニーハオ)」と言ったり、手を振って気づかせるようにしてこちらが何かジェスチャーを示すとほとんどの人が即座にニコッと笑顔を見せてくれるのも中国深圳で感じた人の特徴だなと。しかもその笑顔がみんなとても素敵で、もっと砕けていうとみんなとても可愛い。話しかけた時、あれ、無視されたのかな?と一瞬、虚しくも感じるのだけど、そうじゃない。単に英語の音を知らないだけ、だから反応しない(だと思う)単純というかシンプルというか。

篠原紙工が中国とどうつながるかはまだまだ未知ですが、スタートとしては今回はとても貴重な機会だったなと感じてます。

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