綴る

採用のこと

「篠原紙工で採用はしていないのですか」時々そんな声をいただきます。ご興味頂く度にありがたい気持ちでいっぱいです。お問合せいただく方々へ向けて、篠原紙工がどんな考えで、どんな人と一緒に働きたいと考えているか、こちらで少し綴ります。

篠原紙工が想いに寄り添った本づくりをする仕事のやり方にシフトしてから数年が経ちます。それまでは、いわゆる下請けの仕事もたくさんしていました。会社を維持していくためにも必要でしたし、量産をこなしていくことも篠原紙工の大きな仕事でした。

ただ、流れてきた製本作業が最終的に誰に、何のために使われるのかということを知ることもなく、大きな仕事の流れの一部だけを担うやり方が本当に今の自分たちがやりたい仕事なのか。今後、自分たちが目指すところはどこなのか、と問いかけ、少しずつ仕事のやり方や考え方を見直し、仕事を選ぶ勇気と決断を積み重ねて今に至ります。

今では多種多様な本をつくっているように見える篠原紙工ですが、それは何か特殊技術があるわけでもなく、有能な職人が集まっている会社というわけでもありません。製本の基本技術や機械のスペックを理解した上で、通常ではあまりやらないことをちょっと多く 「チャレンジ」 している、それがここまでの個性をつくり出してきたのだと思います。

機械の都合上この装丁はできない、だけで終わりにするのではなく、そもそもなぜその形やデザインである必要があるかという本質を問い、予算や納期など条件がある中で理想に近づくにはどうしたら良いかと考えること、それが今の私たちのやり方です。製本会社が企画段階から介入するのは珍しいかもしれませんが、デザインや装丁仕様がまだ固まってない段階からアイデアやコンセプトを共有してもらうことを重視しているのはそのためです。

そして、お客さん、社外、社内も含め人との関係性をとても大切にしています。特に依頼があってのものづくりは、初対面から始まり、依頼する側、される側という割り切った関係だけになってしまうと何かあった際に責任の所在がどちらかだけに偏ってしまったり、相手の考えや問題点が見えないと制作側としてベストが尽くせないことがあるのです。

自分の考えを伝える。相手の声に耳を傾ける。時にはその一歩奥にある隠れた想いや希望を引き出し、自分たちが持っているものと掛け合わせて最大限何ができるかと寄り添う。お互いの立場や状況を理解し、自分ごととして物事を捉えられるかが良いものをつくる要素の一つだと、私たちは考えています。

社内の様子といえば、ここ数年で案件共有をする時間がとても増えました。どういうつながりや出会いからの始まりで、誰が担当して、どんな人が関わっていて、そこでこんなコミュニケーションがあって、制作面ではここが課題で…等々、良いことも悪いことも全て話すようにしています。篠原紙工はどんな人を求めるか。印刷製本の経験、年齢や性別、国籍という外側のことよりもここまで書いた私たちの考え方に共感、興味を持ってくれる人。物事や自分自身に向き合おうとする姿勢がある人。

篠原紙工メンバーにはそれぞれが自律した精神の持ち主であって欲しいと思っています。なんとなくある既存の価値観に縛られず、否定するわけでもなく、常に自分がどうありたいかと考えることを諦めないでと伝えています。個人の成長と共に会社全体にどう貢献できるか、自分と向き合って格好つけずに地道に行動し続けていくことができる人。私たちもそうあろうと心がけています。

今はいろいろな働き方も増えて、生き方もどんどん自由になってきていると思います。だからこそ自分がどんな生き方をしたいのかを考えることはとても大事。会社に入社したら、あとは与えられた目の前の業務をこなすのが仕事、と思い込んで自分の人生を会社に預けてしまうのではなく、会社という舞台で自分を活かし、互いに助け合って働く、生きていく。そんな考え方に興味を持ってくれる人にとって、篠原紙工という職場はきっと居心地がいいと感じるのではないかな、と思います。

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