綴る

ことばのいぶき

私は数年前に新島さんがきっかけで五十嵐威暢さんの存在やTwitterでつぶやいてた数々の言葉を知り、どの言葉も心に響くもので、どうやったらこんなに端的に言葉に表せるのだろう、と羨ましく思っていました。一度もお会いしたことがないのに読むと、心合う親友と人生の謎や答えのない問いを語り合っているようで、この言葉の背景に五十嵐さんの人生の中でどんなことがあったのだろうかと想像はつきません。

昨年、五十嵐さんの故郷である北海道で行われた傘寿のお祝いでご本人にお会いする機会がありました。五十嵐さんと交流のある人々がたくさん参加され、その方々へのお礼として、新島さんが主軸となって出版した本「はじまりの風 五十嵐威暢のことばのいぶき」をプレゼントをするという流れで私たちも参加させていただいたのです。

お祝いの会も和やかに終わる寸前のことでした。五十嵐さんに直接お話しできるチャンスがあり、勇気を出して「初めまして、なのですがお伝えしたいことがあります。五十嵐さんの言葉はご自身が想像する以上に若者たちに響いていてこの本が完成されました。五十嵐さんの言葉は私も含め彼らの中でこれからも、ずっと力強く生きています。本当にありがとうございます。」と五十嵐さんの耳元でささやかながらお伝えさせていただきました。すると、五十嵐さんは私の目を力強く見て、「それは最高の褒め言葉だね。もう返さないよ。」とっても粋なお返事をくださいました。

「はじまりの風」のページを開くたびに、五十嵐さんと会える。読むたびに五十嵐さんと自分の内側と私と3人で話し合っている感じがする。私がこの世で生きている限り、五十嵐さんも私の中では生きている、そんな気がしてなりません。五十嵐さんのご冥福を心からお祈りいたします。


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