Gala Party 終わりの祝典
CODEX最終日は15時まで。その日の夜は食事会があり、私たちも参加してきました。テーブル席の食事会で、誰と一緒に座ろうかとウロウロしていたら、幸いにも4日間毎日会場を歩き回っている私たち日本人のことを覚えてくれた出展者の方から声がかかり、テーブルに同席させてもらいました。我々の席はベルギー、アメリカ、日本と国が違うもの同士、違いがあるからこそ話もしやすく、充実した時間が持てました。
ベルギーから来て今回初めてCODEXに参加したという女性の作品はどこか日本の文化を彷彿させるサイズ感や色合い、素材を使っていて、「日本を思い出させる風合いがありますね。」と話したところ、日本への憧れがあるらしく、和紙を好んでいて、喜んで私たち日本文化へのリスペクトを語ってくれました。彼女の作品だけでなく今回のCODEXを通して感じたことは、全体的に和紙を使う人がとても多いこと。みなさん口を揃えておっしゃられるのは、和紙は紙そのものが美しくて、自然な風合いがとても魅力だと。素材として丈夫で使いやすいとも話していました。日本国内でも高額な和紙、アメリカやヨーロッパではもっと高いはず。それなのに和紙を使って作品を作りたいと思う人がこんなにもたくさんいるのかと思うと、私自身も母国への誇りが強まります。今回初めて知ったのですが、西海岸では和紙を手に入れるならば「Hiromi Paper」というくらい、(おそらく)何世代かに渡り日本人が経営されている有名な紙屋さんがあります。CODEXにも出展者として和紙やその他日本の刷毛など、道具も販売していました。日本の和紙は海外でもきちんとビジネスとして成り立っているのですね。日本は確かに紙が好きな文化です。アートブックという分野を紐解いていくと日本文化そのものと繋がる部分が出てきそうです。
パーティーの話に戻ります。ホテルのバンケットルームを貸切で行われたのですが、着席スタイルで堅苦しいのかと思いきや、各テーブルそれぞれ和やかに会話を楽しんでいる様子。運営スタッフの方々のスピーチの時も感謝の念が溢れ出ていて終始人の温かみを感じるパーティーでした。同じテーブルのアメリカ人は「これだけの種類豊富なお酒を出すなんてCODEXの実行委員はきっとお酒が好きよ。」とジョークを含ませながら話していたのですが、程よく華やかさを感じる雰囲気は gala dinner に相応しく、運営側のおもてなしの心が伝わってきました。
私が初めて見て感じたCODEXの印象は、非営利団体であるCODEX Foundationの意志を感じるブックフェアであるということ。売買がいちばんの目的ではなく、アートブックという文化の維持と発展が大きな目的なのだということが伝わりました。まだ大きくなりすぎていないというのも運営者のエネルギーを感じられる距離感で良いのかもしれません。付け加えて、参加者の年齢層は幅広いのですがどちらかというと高い感じがします。全体に落ち着き感があるのはそのためかもしれません。
パーティーも終盤に差し掛かるとCODEXの発起人であるPeter Rutledge Koch氏のスピーチがあり、彼が登壇すると本当に2024年のCODEXが終わるというエネルギーが全体に響き渡り、出展者も運営側も互いに感謝と労いの言葉を掛け合い、また2年後の再会の願いを交わしました。まるで、なかなか会えない心からの親友に別れを伝えるように。
CODEXがこの先どのようなブックフェアになっていくのか、そして篠原紙工はいつかこの地に出展側として参加するのか、未知ではあるけれども、この経験から「本」の世界はまだまだ広くて挑戦できることはまだたくさんあるということを教えてもらいました。今後日本人アーティストの参加も増えるのではないでしょうか。CODEXを知らないアーティストも日本にはまだいると思います。ここに記したことは微々たるものですが、誰かのお役に立てたら嬉しいなとささやかながら思います。