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篠原紙工の書籍販売 (1)


篠原紙工に来られる方々は様々。みなさんそれぞれの想いがあって篠原紙工に足を運んでくださいます。 相談してくださる方の「作りたい」という言葉を掘り下げ、本当にやりたいこと、表現したいこと、本質に迫るために篠原紙工では何事においても対話を大切にしています。

そんな自分たちの在り方を少しずつ実践してきた結果、ここ数年で発注する側、受注する側、というような一般的な関係を超え、篠原紙工と共にチームになって仕事をしてくださる方々と出会うことが多くなりました。こちら側の提案で想像以上に相手の心が動いた時は、1+1が3になるような気持ちになります。依頼してくださった方々と同じ目線で制作に打ち込むことで双方にとって良いエネルギーの循環が生まれていると感じています。

しかし、そんな素敵な方々と仕事をする回数が増える度に、心の中で気になっていた、あることが徐々に大きくなってきました。
私たちの仕事は制作物や本が完成し、納品すれば業務としては完了です。しかし、本当の意味で仕事とはもっと広いもの。私たちにとってのお客様は、その後はたくさんの人に本を届けるために販売や広報活動を続け、まだまだ仕事は続います。

製本会社としての任務は完了。チームからは離脱し、その後は応援しつつもただ眺めているだけ。篠原紙工では制作プロセスにおいての人と人との関係性を重視しているのにも関わらず、無意識にどこかでその後の本の行方 (売れ行き) は他人事になっているのではないか? また、企画段階で私たちの過剰な製本提案によって原価が高くなってしまい、それが販売数にまで影響が出てしまったのではないか? 販売されるということをこちら側がもっと考慮していたらもっと多くの人に本が届いていたかもしれない。そんなグレーな、なんとなく?直視しがたい…想いがここ最近色濃くなってきたのです。

そのグレーな感情を光に変えるためにも、篠原紙工で制作した本を販売する、という決断をしました。それは「制作した責任を負う」というような、後ろめたさからくる消極的動機ではなく、「本を販売する」ということを始めから自分たちの意識に取り入れる。このような意識で仕事をすれば今まで以上にお客様とのチーム力はきっと増すはずです。それに加えて、私たちの製本の提案にも変化が生まれ、もっと広い意味でより良い製本ディレクションができるのではないか?積極的な動機で、自分たちに対して新しいチャレンジをしてみたいという想いからの決断です。

この書籍販売について、私たちの考えやストーリーを少しづつ綴っていきたいと思います。次回は書籍販売をするきっかけとなったフォトグラファーの方との出会いをご紹介します。

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