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コンセプトに乗り、製本で遊ぶ
バンドのメンバーのバラバラな個性を1つにまとめたい
数年前の名刺交換以降はご縁がなかったグラフックデザイナーのショートリードジェシカさん。ある日、突然連絡があり、Nature Danger Gangというバンドのファンクラブ向け冊子を作りたいというご相談を受けました。
久々の再会。さっそく打ち合わせをすると、イメージや予算、部数などもすでに決まっていたためスムーズにいく仕事のように感じましたが、この冊子でバンドメンバーのバラバラな個性を本で表現したいというジェシカさんの強い想いがありバンドの動画なども見る限り一筋縄ではいかなそうな内容でした。
奇想天外な本
ジェシカさんの考えるイメージは、ジャバラ本で作りもバラバラだけど本としては1冊にまとまっている感じにしたい。それを受け、製本をする側としてどうやったらそのクレイジーさを表現できるか考えた時、200部という限定された数、そして予算も決まっていたことから手作業の工程を入れて工夫を凝らす製本をしてみる方向性が見えてきました。
この時点でどんなハチャメチャな製本にチャレンジしようかと制作側のスイッチも入り、製本でできる可能な限りのバラバラ感のある仕上がりを提案。
ジェシカさんの要望で各メンバーごとに紙や印刷を変えるということの他にも、本文のサイズを変える、縫い糸の色を変える、綴じる位置を変える。1冊として全く同じものがない本は熱狂的なファンの心を動かすのではないか?と想像しながら現場のスタッフと協力し、ジェシカさんのコンセプトを踏まえた上で、あえて正確さにこだわらず本文の位置ズレ感を出すことにしました。
製本は中身を伝える大切な器
この案件では手も機械も両方使い、初挑戦の仕様であると同時に手間がかかるため、納期はかなりいただきましたがコンセプトを製本の力でより印象強く伝えることができた作品になりました。書籍というと中身のグラフィックデザインが中心となり、本の形になる最後の工程では「できる・できない」だけで判断されて本の内容と形がそぐわなくなってしまうことが多々あると感じています。限られた条件の中でデザイナーのコンセプトをどうやって製本で表現するかということが製本会社としての仕事であり、楽しいところ。今回の案件ではジェシカさんのコンセプトの中、製本技術で遊ばせてもらいました。
担当 : 篠原慶丞
手作業と機械の両立をし、製本のカタチでコンセプトを表現できた、私にとって思い出深い作品になりました。