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縁結びの神さま、製本でも「結び」を大切に
蛇腹本ではない、御朱印帳
ある印刷会社から川越にある川越氷川神社の御朱印帳を作る相談を受けました。
御朱印帳といえば2つ折りを交互に重ねて貼りあわせる蛇腹本が基本ですが篠原紙工ではこの製本の量産は難しく、受けたとしてもほぼ外注になってしまうことからこの仕事を受けるかどうか迷っていました。
ところが内容を詳しく聞くと川越氷川神社は細部までデザイン性を大切にし、御朱印帳にもこだわりがありました。御朱印帳を作る工場は日本全国でもあまり多くない上、制作の規定も多いことから規格外のアイデアも受け入れてもらえる工場を探しているとのことでした。デザイナーの方も御朱印帳だからといって蛇腹にはこだわらないということで制作の幅が広がり、最終的にはデザイナーさんと直接仕事を進めることになりました。
既存のお守りとどう掛け合わせるか?
川越氷川神社は縁結びの神様、歳時に関わる結びの形と色の「まもり結び」という、結びのお守りで知られています。御朱印帳もその「結び」が大切なテーマでした。「結び」をコンセプトに糸かがり製本、そして表紙は活版印刷、通常の布製の御朱印帳とは違うタントシリーズの紙を使うなどデザインへの細かいこだわりが御朱印帳の中にちりばめられていました。
篠原は、川越氷川神社を代表するとても美しいお守り、「まもり結び」の確立されたアイデンティティを考慮し、装丁は見た目がよりシンプルなスイス装を提案しました。
「結び」という大切なコンセプトを製本で台無しにしないために
表紙には「結び」の模様が活版印刷で本の天と地(上下)を貫いて刷られているのですが、中途半端な位置で結びの絵柄が切れている状態を見せたくないというデザイナーさんの想いがありました。やはり縁起を考慮して「結び」というテーマがあるがゆえの意思であろうと篠原は察し、活版印刷の現場でも仕様の詳細、この御朱印帳の背景を説明し、細かい調整に納得して協力していただくように職人さんへお願いをしました。また、背を糊付けしないフォローバックの形にして糸かがりを壊れにくくする仕様にし、製本という枠の中でデザイナーさんの意図することに適したに方法、機能性を考え、完成までたどり着きました。
制作場でも目を惹く存在感
この案件は篠原が初期から携わり、社内でも制作において細かい指示や背景ストーリーがあることから篠原紙工全体にとっても印象深い案件となりました。
制作場でパレットの上に12種類の色鮮やかな御朱印帳が整然と積まれている様子はとても存在感があり、目を惹きます。朝一番で制作場のドアを開け、積み重ねられた御朱印帳を見ると、なぜだか心が晴れやかになります。制作スタッフが紙に神さまが宿るように「こころ」を込めて丁寧に手を動かしているからでしょうか。この御朱印帳を手にした方々へもそんな私たち制作スタッフの想いが伝われば嬉しいです。
担当 : 篠原慶丞
テーマとクライアントさん、デザイナーさんと篠原紙工がちゃんと結んで進められたことで、今でも神社を訪れる方に愛される御朱印帳に仕上がりました。