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本は人を集める力がある
社員を通してつながった大きな仕事
「君の勤める製本会社で仕事を頼めないかな?」新島の大学時代の先生からの依頼でした。
内容は有名なデザイン雑誌AXISのこれまでの巻頭インタビューを1冊にまとめた本。新島の中でAXISのポートレート書籍は先生にとって大切なプロジェクトであることを知っていたためプレッシャーを感じましたが卒業生として、先生に頼られる喜びもありました。
仕様や印刷の手配などは篠原が担当、新島は実際の制作の段階から動きました。篠原はAXISの内容に適した印刷会社を考えていたのですが、先方でも考えていた印刷会社が既にあり、その間では金額にかなりの差がありました。それにも関わらず、金額と労力は大きいけれど、制作にいたる過程で細部にまで制作者の意図を反映させる、私たちの進め方に同意をいただき、全てを任せていただきました。そのため篠原紙工の内部でもこの案件に関しては良い意味で緊張感のあるものとなりました。
製本方法はスイス装というハードカバーの表紙で本文に刷毛でボンドを塗り、3枚芯の表紙に貼り合わせる加工。これは表紙も本文も仕上げた状態だったので通常最後の仕上げとして行われる三方断裁ができません。そのため少しでもずれてしまうと失敗になってしまいます。手作業で2000部を新島が一人で行ったのですが今までで一番神経を使う仕事だったと言っています。
本が持つ力
制作が終了した後日、篠原と新島はこの本の出版記念パーティーに招待されました。六本木にあるギャラリーに訪れると会場には多くの人で賑わい、その中にはポートレートに登場した方々もいらっしゃいました。また撮影をされた方々の手書きのスケッチや言葉が印字されたテーブルがあり、AXISという一つの本を通して語らい、楽しみ、コミュニケーションが生まれている様子を見た新島は、この本なしにこの空間はできない。本は読むものだけでなく、人が集まる場を生む力があるということを実感しました。
このAXIS記念書籍の出版にあたり関わった人たちの紹介の際、篠原と新島はいちばん最後に紹介され、「この人たちなしではできなかった。」という言葉をいただきました。篠原紙工にとっては大きな仕事で常に緊張と隣り合わせの仕事でしたが大変光栄で貴重な経験となりました。
担当 : 新島龍彦
本の持っている力を改めて強く感じることができました。大学を卒業した今でも、こうして仕事を通して先生から学べたことが嬉しかったです。